お墓参りをしたくなる樹木希林さんの映画の話

仏壇・墓石・信仰用具の株式会社・とっと スタッフ山﨑です。

今年カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した「万引き家族」。その是枝監督が十年前に撮った映画に「歩いても歩いても」という作品があります。主演は先日亡くなった樹木希林さん。
以前BSで放送されていたのですが、途中から引き込まれるように見入ってしまいました。

あらすじ

ある夏のおわりに開業医だったの父(原田芳雄)と母(樹木希林)のもとに次男(阿部寛)家族や長女(YOU)家族が十五年前に亡くなった長男の命日のため集まります。

母は次男と子連れで結婚した女性が内心気に入りません。頑固な父は自分の跡を継がなかった次男に不満を持ち、次男は次男で優秀だった長男といつも比較されていたため強烈なコンプレックスを抱えています。
そして映画全編に亡くなった長男の存在が影を落とします。

なにげない日常の会話と当たり前の風景の中で、登場人物が心の中にかかえる感情。それはまるで沈殿する「おり」のよう、少しの衝撃でふわりと姿を現します。

亡くなった長男は15年前、海で溺れかけた子供を助けて死んだのでした。助けられた子供は毎年命日にこの家を訪問します。成長した彼は一見何のとりえもない平凡な青年に育っていました。樹木希林さん演じる母親は「なんであんな子のために息子が死ななければならなかったのか」とつぶやき、毎年青年を訪問させるのは小さな復讐であることを告白します。

結局、アメリカ映画のような決定的なぶつかり合いや感動的な和解はなく、それぞれの家族はそれぞれの日常に戻っていきます。

数年後、次男家族がすでに亡くなった両親のお墓参りをするシーンでこの映画は終わります。お墓参りの途中で次男は黄色い蝶を見つけます。そしてかつて母が黄色い蝶は死者の生まれ変わりだと言っていたのを思い出すのでした。

お墓参りの教えてくれること

淡々としたストーリーですが、登場人物の会話は、はっとするほどリアリティがあり、まるで親戚の法事の一日を切り取って見せられたよう。
秀逸なのはラストのお墓参りのシーン。お墓参りをする次男の表情はおだやかで、両親との確執を乗り越え、すでに精神的な和解を受け入れた様子がうかがえます。おそらくそれは両親の死後のことではないでしょうか?
そういった意味で死者はずっと生きている者たちに影響をあたえ見守っているといえるのかもしれません。お墓参りがそのメタファーとして描かれ、味わい深いラストシーンとなっております。この映画を見た方は、きっとお墓参りに行きたくなるのではないでしょうか?

奇しくも両親を演じた原田芳雄さんと樹木希林さんもすでに鬼籍に入り、あちら側からこれからの映画人を見守っていることでしょう。

時の流れを感じつつ・・・・皆様も機会がありましたらお墓参りをしたくなる映画「歩いても歩いても」を是非ご覧くださいませ。

仏壇・墓石・お祭り用品 株式会社 とっと

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